ごちゃまぜカフェ物語 28

カフェの扉が鈴の音と一緒に開く。

「どこに座ればいい?」

少し疲れた表情を浮かべた男性を
店内の中央の席へご案内した。

小さな子供達が飛び回り、ランチタイムに来て下さった地域の方達の笑い声がいつも以上に店内に響いていた。

初めて来店されたそのお客様は
注文された珈琲を口にする前に、恐るおそるといった様子で私に質問を投げかけた。

「なんだかここは、普通のカフェらしくないけど、どんな所なの?」

私が介護福祉士であることや、6年間ボランティア団体として福祉に関する活動を続けてきて、今はNPOとしてカフェを運営している話を簡単にすると、男性はもう一度ゆっくり店内を見回した。

ご自分のお母さんを何十年もの間
介護してきた話し、その為に仕事を辞めざるおえなかったこと。そして、そのお母さんが最近亡くなられた話をポツリ、ポツリとして下さった。

言葉が心の奥底から溢れる様に話したその日の夕方、彼はもう一度カフェを訪ねてくれた。

お母様の話意外に、大好きな猫の話と、趣味のプラモデル作りの話をした後に、ポツリと彼が言葉をもらした。

『正直、俺もいつ死んじまってもいいと思っている。酒ばっかり飲んで、体もガタガタだからな…お袋がいっちまって、もう俺はこの世でたった一人だよ…でも、後悔はしてないし、もっと長生きしてほしかったんだ。ずっと親一人子一人の家族だったからな… 俺ね、お袋がいっちまっう少し前に恥ずかしながら伝えたんだよ “お袋、大好きだよ!”って、お袋は恥ずかしそうに笑っていたよ…』

静かな町が薄暗くなり始めたた夕方。今度はご自慢のプラモデルを見せて欲しいと頼んだ私に

『気が向いたら、また来るよ』と、背中を向けたまま手をふりその男性は、帰って行った。

今日も カフェの扉が鈴の音と一緒に開く。

「どこに座ればいい?」

彼のまだ少し硬い笑顔と、笑い声が
今日もそこにある事が嬉しい。

※ご本人の許可をいただいて、文章にまとめさせていただきました。

© ごちゃまぜカフェ