ごちゃまぜカフェ物語 42

カフェをスタートしなかったら
出逢えなかった方達が沢山いる。

カフェのお客様を通じて出会った97歳の女性の自宅へ足を運び始めたのは、去年の夏だった。

軽度の認知症があり、色々と心配だと親戚の方からご相談を受けたのがきっかけだった。

その方を誰かが「おばあちゃん」と呼ぶと、彼女は決まってこう答える。

「私は、あなたのお婆ちゃんじゃないし孫もいないから、人生で一度だってお婆ちゃんになんてなったことは無いのよ!」

一年前、娘さんを亡くされたその方は、いつも大きな声で娘さんの名前を、居ないとわかっていて呼んでしまうと話してくれた。

~そこに貴女がいないのがさみしいのじゃなくて、そこに貴女がいないと思うことがさみしい~

昔聞いた歌の歌詞が、頭をよぎった。

何度会っても、彼女は私の名前を覚えられないけれど、彼女は私の顔を見る度に

「あ、貴女来てくれたのね!」と笑顔で出迎え、娘が帰ってきたみたいだと喜んでくれる。

そんな彼女が、ふと私の顔を覗き込んで呟いたことがあった。

「ねえ、貴女は、私が死ぬまで見ていて側にいてちょうだいね。約束よ。」

「約束します。」

返事をしてから、自分の命が
重たく自分に覆いかぶさる様な感覚にとらわれた。

「ありがとう。」

彼女が、嬉しそうに優しく微笑んでくれた。

人生で色んなことがあり、死にたくて仕方がなかった7年前の自分の命は、今はもう自分とは別の所で突き動かされているのだと強く感じている。

カフェで出会った皆さんと
命を重ね、時を重ね生きている今、

「生きること」について、改めて考え続けている。

誰にでも、幸せになる権利がある。

誰にでも、報われて生きる権利がある。

『答えは、いつもシンプル』

たった一つの出逢いや、ほんの少しの時間が、人生を温かい方へと運んでくれる瞬間があれば

どんなに辛い人生も、まんざら
捨てたもんでもないと感じあえる。

「貴女、今度温泉旅行へ泊まりで連れて行ってくれる?」

97歳の彼女が、イタズラっ子みたいに目をキラキラさせながら言った。

人生は、気が付きさえすれば
その瞬間から

奇跡と不思議の連続なんだ。

© ごちゃまぜカフェ