ごちゃまぜカフェ物語 15

認知症の深いお母様を
施設から連れ出してお出かけがしたいとご相談を受け

足を運んでくださった娘さんとの打ち合わせと、何回もご連絡をいただいた後で

三世代のご家族が一緒にカフェへ食事に来て下さいました

( ´ ▽ ` )ノ

認知症が深くなってから
落ち着かないので何処へも連れて行った事がなかったとの事でしたが

席から立ち上がる事もなく

お孫さんと笑い合いながら、のんびりと過ごしていただく事が出来ました

認知症の方がカフェへ入って来て下さった瞬間が全てを決めると、私は感じています

その方が持つ言葉の数や、声のトーンとスピード、体の状態、視線の先を確認すること

そして、笑顔を引き出すやり取りを、ご家族と共有することで

穏やかな時間を作り出す事が出来ると思います

娘さんが注文した食後の珈琲を見て

『あ〜』と瞳を輝かせたお母様に

トロミをつけた珈琲をお持ちすると
嬉しそうに肩をすくめてニッコリされたお顔に、こちらが幸せをいただきました

( i _ i )

帰りがけに

『…実は、相談したいことがあって…施設でなかなか爪を切ってもらう時間がないのか、指の爪の間に黒く汚れがあるまま伸びっぱなしだったので、3回も話してやっとカットしてもらったんです。今日も大丈夫だったから、もう大丈夫かと思うのですが…』

なんとなく気になり、足の指を見せていただきました。まだご自分の足で歩くことも出来るお母様の爪は、伸び過ぎて指の裏までまわっていました…不揃いに伸び過ぎた爪は、隣の指を圧迫して皮膚が赤くなっていました…

それを見た娘さんは、抑えきれない気持ちで胸がいっぱいになり

肩を震わせていました

『私、施設に話していいですよね?』

娘さんが、私の目を見て言いました。

『もちろんですよ。施設側に理由があり切れないと言うなら連絡ください!』

痛みが出そうな部分の爪を少し削らせていただき、お母様は帰って行きました。

施設の職員さんは、忙し過ぎるのか?
施設の職員さんは、爪は切れないのか?
施設の職員さんは、お母様を大切にしてくれていないのか?
施設の職員さんは、認知症が酷いから爪を切るのがムリなのか?

娘さんと、お孫さんの質問に
私は、胸が苦しくなりました…

今日、娘さんが2日ぶりに施設へ足を運ぶと、施設のトップの方達に頭を下げられ、爪は綺麗にカットされていたそうです。

(なんだ、やれば直ぐに出来たんですね)そんな、胸の中の言葉を娘さんは、飲み込んだそうです…

カフェだから出来ることを
カフェにしかできないことを
私たちは、まだ模索し続けています

まだまだ、力不足です
まだまだ、答えは霧の中です

でも、もう少し
進んでみたいと思います…

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