ごちゃまぜカフェ物語 32

カフェには

その日、学校に行けなかった子供達がお母さんと一緒にたずねて来てくれる事がある。

そんな風に、カフェへ来てくれたひとりの中学生に

朝から掃除をお手伝いしてもらったりしながら一日を一緒に過ごした。

彼女は、笑顔がとても素敵だし、大人たちの会話にも絶妙なタイミングで突っ込みを入れてくれる。

私も学校が嫌いで、たまにズル休みをしていた。

その子と学生時代に出逢えていたら、きっといい友達になれただろうと思う。

その日、彼女はカフェの片隅で、
一日中静かに絵を描いていた。

その絵が、とても素敵で
通りかかる度に覗き込み

その絵に、心惹かれた。

気がつくと、カフェにいた大人達が
みんなして彼女の絵を覗きこみ、どうしてもその絵が欲しいと、彼女と交渉が始まっていた。

午後になり、カフェの外では冷たい風が吹き始める頃には、彼女の手元から、その日彼女が描いたポストカードは、ほとんどなくなっていた。

『…どうしよ!?…すごい嬉しいや!このまま死んでもいいくらい嬉しいよ!!』

涙ぐみながら、そうお母さんに話す彼女の背中を、

最近は、ケンカばかりだと話していたお母さんが優しく抱きしめた。

私も、このまま死んでしまっても
後悔はしないくらい嬉しい気持ちで
胸がいっぱいになった。

『嫌々ながらでもいいから、学校行ってごらん。いつか、大好きな事をして生きる日の為にね。でも、どうしてもムリだと思う日は、またおいで。掃除してもらうからさ(笑)』

冷たい風が吹く中

彼女は、こぼれ落ちそうな笑顔をこちらへ向けて『はい』と返事をすると、お母さんと一緒に帰っていった。

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