ごちゃまぜカフェ物語 57

「行ってらっしゃい」
「ただいま」
彼女と何回この言葉をカフェで交わしたのだろうか?
カフェのオープン準備をしていた
一年半前の4月。
ふらりと現れた彼女の「心」は、悲痛の叫びに満ちていた。
それは今の彼女からは、とても想像が出来る状態ではなかった。
常に落ち着かないか
ひどく落ち込み続けるか、
自分をコントロールすることも出来ず
人を信じることも出来ず。
彼女の周りでは、日々
大小様々なトラブルが起こり続けていた。
「どうせ最後は、みんな居なくなる。私は、一人だ。人が怖い…どうせ私なんかには、無理なんだ…」
そんな風に話す彼女と、いったい何度
言葉を交わし続けただろうか。
365日と数ヶ月、彼女の顔を見ない日は無いほど、彼女は毎日カフェで過ごし続けた。
カフェの二階にある「ひきこもり部屋」から降りて来れない日が、いったい何日あったのだろうか?

『カフェなんかにいても、何も変わらない。』そんな言葉を彼女に投げかける人もいた。
それでも彼女は、カフェに通い続け、
気がつけば、彼女がカフェで過ごす間に知り合った人達の数は、年間を通じて100人を簡単に超えていた。
アップダウンを繰り返し続けた一年半。
気がつけば彼女は、マイクを持ち大勢の前で、自分の人生や生きづらについて、語れるまでになっていた。
彼女は、夢を追いかけて、
今日、千葉へ旅立った。
沢山の仲間達が、彼女に言った。
『いつでも、帰っておいで!』
帰れる場所がある。
帰れば笑顔で迎えてくれる仲間達がいる。
『もう、一人じゃないから大丈夫です?』
彼女が、力強く笑った。
「人は、人と生きてこそ人。」
彼女の笑顔が、私たちに教えてくれた。
行ってらっしゃい、
いつでも、待っているからね。
貴女は、そのままで大丈夫!
さあ、もう一歩前へ。

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